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愛しのパプリカ 映画「パプリカ」について

2016.08.23 Tuesday 18:02

5月の終わりか「妄想代理人」を視聴して、その後パプリカ漬けになっていた.エンドロール「白虎野の娘」のイントロからのワタシのむせび泣き.いやいや、どこで泣くんやと.んなもん、作品の素晴らしさへの感嘆と、こんな作品を産みだした人がもうこの世にはいないんだという落胆に決まってじゃないか!!!
もともと好きな作品だったけれども「妄想代理人」をきっかけに今敏監督のKon'toneを読んで再燃.文章のリズムが心地いいし、考えていることがとても好きになった.まるで恋のような激しい再燃に陥ったのだ.
で、オーディオコメンタリー目的で「パプリカ」と「千年女優」を買ったものの.「パプリカ」では平沢師匠が「千年女優」では音響監督が、動く絵に音や音楽をつけることについて熱く語っていらっしゃる….いや、いいんだけどね.私が聞きたいのはそれじゃないの.どちらかといえば『画を紹介するためのストーリー』とまで言い切った画について.例えば、コメンタリーの中で言っていた「スフィンクスとオディプス王」とかね.さらっと口頭に出た西田幾多郎とかね.筒井康隆の小説をアニメ化した以上に筒井氏の言葉のイメージを具現化したことや、今監督の思想を落とし込むこととか――そう言うことが知りたかったんですよ.
と、嘆いても仕方がない.あとは解釈で画の奥行きを察して、あーだこーだと見誤るすべしか持たない.しかしそれが楽しいのがこの作品の魅力でもあるように思う.現実と嘘、現実と夢、その間にある姿なき虚構を描く今監督に乾杯.

映画「パプリカ」公式サイト(音あり)
http://bd-dvd.sonypictures.jp/paprika/site/home.html

「パプリカ」の物語は難解?
パプリカってどんな物語???
「新発明の機械が盗まれて悪用され、ヒロインが変身して夢の中にその悪党を捕まえに行く」みたいな話.(映画公式今監督インタビュー)
要約すれば明快.その通り.とは言えご存知の通り、視覚から入ってくる情報は明瞭ではないし、結果(結末)より過程を描きたい作風なので<物語>としてどこか収まりの悪さも感じる.「妄想代理人」も然り.
そして「千年女優」も同様だけど、個人的に「千年女優」のラストはその台詞で良かったのだろうか?と懐疑的なファンの一人だ.
結末の感触で作品への主観も変わってくる.パプリカのラスト、敦子と理事長の怪獣映画的クライマックスに肩すかしを食らうのも理解できる.というか、展開の精彩さを思うとどの作品も〆が大味なのは否めないし、今監督自身それでいいと思っている節もある.

「パプリカ」の物語の細分化
主軸(1)奪われたDCミニにまつわる物語
サブ(2)セラピスト敦子の物語
サブ(3)粉川警部のトラウマ
構造は、主軸に二つのサブストーリーが絡んでいく感じかな.奇怪な映像で惑わされたり、サブの(2)(3)に割かれるコマが少ないので確かに初見では物語が分かりにくい.サブストーリーについてちょい語ってみる.
(2)セラピスト敦子の物語
中盤の敦子の台詞「わたし、夢を見てない」からの、終盤、パプリカの台詞「敦子が夢を見ている」へと変化する物語.
【夢を見る】というのは[have a good sleep]と[have a dream]の二つを同時に意味しています.仕事に忙殺されている敦子は、夢を見ていない.一方、ビジネスパートナーであるDCミニの開発者時田くんは夢多き理想主義者として描かれています.DCミニの発明に関しても「別々の人が同じ夢を見れたらいいなあ」というのが制作の理由でした.
敦子と時田くんの繋がりはこの部分ですね.過食症でマッドサイエンティストな時田くんに苛立ちつつも、科学者として彼を尊敬し、いつからか彼と同じものを見ていきたいと思うようになる――これがセラピスト敦子の物語でした.
オーディオコメンタリーでは、序盤のエレベーターシーンが終盤の展開と繋がるとは思ってなかった…みたいなことを今監督言ってましたが、このシーン大好きですよ.

(3)粉川警部のトラウマ
不安神経症に悩み、友人の島を通じて、パプリカのセラピーを受けている患者さん.DCミニによって繋げられてしまった夢の世界で、敦子とパプリカを救うヒーローでした.(妄想代理人の猪狩刑事と似た役割ですな)
粉川は、赤い絨毯の廊下で殺人犯を取り逃したことがきっかけで、不安神経症に陥っています.しかしどうして不安神経症になってしまったのか.本人が自覚できない問題を夢セラピーによって表在化させる「パプリカ」の設定は本当にユニークですね.
粉川は、パプリカのカウンセリングにより、共に映画作りの夢を語った親友を裏切り、違う道を歩んでしまったことを思い出します.追うのを諦めた夢と先に往ってしまった親友、そして捕まえられなかった犯人.時間や事象を超え、レッドカーペットが繋ぐ――そう認識するとスローモーションのシーンの特異性や物語への使われ方も面白いです.小山内を射殺したことがアヤフヤになってたりしますが…
粉川警部の物語が個人的には分かりにくかったなあというのが印象です.
比較できるように書いたのでお気づきかもしれませんが、時田たちの未来に拓かれた夢と対照的な,閉ざした夢の物語が粉川警部の物語なのです.そして物語(トラウマ)は、夢の世界で映画スターのような冒険活劇を繰り広げ、犯人役を捕まえて幕を閉じます.思い描く理想を実践することがトラウマの解決法である―それも回答の一つだと思いますし、とても物語的手法だとも思います.
ラスト粉川警部が映画館でチケットを買って終わるのも嫌いな終わり方じゃないです.(パプリカからの手紙で終わった方がいいとも思いますが)夢はいつでも体験できる……そんなメッセージ性がじんわりときますね.

更に考察する「パプリカ」敦子とパプリカについて
少し話は変わるけれども、アトラスのジュナイブルRPG「ペルソナ4」では自己の影(シャドウ)の存在を認め、許し、内包することで心が成長します.フロイトやユング的というか、これはこれで分かりやすいです.一方「パプリカ」はと言うと、もう一人の存在を悪とはしない.「私が敦子をつかさどってるとは思わないの?」だったかな.すごい台詞です.終盤のバタバタしているシーンなのに、ここでしっかり立ち止まって、敦子は敦子自身の気持ちに従って行動するようになります.あべこべでありながら同時に存在する…こういったところが、二者の虚構を好んで描く今監督らしい物語だなと思いました.
あと、敦子とパプリカを呑み込んだ時田のロボットが女を産むという絵ですね.この手の話を好む人間の言い方をすればアニマそのもの(苦笑)クールビューティーな美人じゃ足りない、茶目っ気たっぷりのスパイスを振って創造された女性――コメンタリーの今監督の説明を聞きながら私はそんなことを思っていました.女性の目から見ても、時田くんの手を取った敦子がすごいなって思います.

◇◇最後に
「パプリカ」から十年ですよ.驚きですよ.
なにが変わりましたか?なにが変わりませんでしたか?映画「パプリカ」の伝えた映像の美しさや夢の普遍的な追求は、時代に流されないテーマだろうなと思います.たぶん次の十年を越えても変わらない気がします.作画監督の安藤雅司氏の活躍を喜びつつ、だけど今敏監督の名前がないのが寂しいです.あなたの描きたかったものが見たい、見たかった.そう思えば思うほど目に涙が溜まります.
ああ老いて尚、夢を見たい.
夢見るためには「パプリカ」その一振りのスパイスが肝心.夢に楽土求めたり.

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